曽和利光氏 連載【「人を表現する言葉」を考える】

「人を表現する言葉」を考える(その2)『主体性』

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≪連載第2回≫元リクルート人事部GM、株式会社人材研究所 代表の曽和利光氏に【「人を表現する言葉」を考える】をテーマにお話いただく連載です。

「人を表現する言葉」を考える(その2)『主体性』

デジタル大辞泉によれば、「主体性」とは「自分の意志・判断で行動しようとする態度」と定義されています。この「主体性」あるいは、「自分から」という語感を含む似た言葉として「自発性」「自走」「自律」などは、採用や評価のシーンでは大変よく使われる言葉です。これらの言葉は先の定義のようにあまり議論の余地のない言葉のようにも思えますが、しかしながら、私の限られた経験ではありますが、様々な人事の方にその意味を伺ってきたところ、そうではありませんでした。こんなポピュラーな言葉でもそうなのか、と思うかもしれませんが、例を挙げて説明してみます。

図1卑近な例ですが、私の息子が以前小学校受験の際に受けた模試で、行動観察(子ども達が遊んでいる様子を観察する)という科目がありました。その評価項目に「主体性」があったのですが、息子は恥ずかしながら「聞かん坊」で、やりたいようにやりたいという子どもでしたので、「この項目の評価は高いだろう」と思っていました。

ところが模試の結果、「主体性」は0点でした。「そんなわけないだろう」と、定義を調べたところ、そこには「目の前の課題に対して積極的に前向きに取り組む姿勢」と書かれてあったのです。私は、「それは、主体性というよりは、むしろ『他者の設定したものを受け入れる』といった適応力や従属性ではないか。それはそれでよいが、それを主体性と言うのはどうか」と思ったものです。

実は、これと同じ現象が多くの企業で起こっています。「主体性、主体性」と言いながら、本当は「適応力」「従属性」、もっと平たく言えば「素直さ」「とりあえずやる」ということを求めている企業が多いのです。特に、カリスマトップのいるベンチャー企業や、事業において勝ちパターンの決まっている企業に多い現象です。と言うのも、それらの会社では、本当の意味での主体性(冒頭の定義とします)など、非効率を生み出すものでしかないのです。

図1「余計なことを考えずに、黙って言われた通りにやればよい」というのが本音なのでしょう。しかし、それはある意味合理的なことで、即問題ということではありません。ただし、それを「主体性」と表現してしまっては、混乱が生じます。

「主体性」を持っている人は、言い換えれば、「生意気」「言うことを聞かない」「自分勝手」「わがまま」な人です。「主体性」という言葉が「社会的望ましさ」の高い言葉なので、こういうことが生じます。自分の意志や判断を大事にする人なのですから「素直」とは正反対かもしれません。しかし、フロンティアだらけのベンチャーや、従来の勝ちパターンが陳腐化して変化を求められている企業には必要な人材でしょう。さて、皆さんの会社では、どちらの「主体性」が重要でしょうか。是非、ご検討ください。

株式会社人材研究所
代表取締役社長  
曽和利光氏

採用後ろ倒し対策のコンサルティング、面接官・リクルータートレーニング、イベント選考アウトソーシングなどの採用をすべて一気通貫で行う。元リクルート人事部ゼネラルマネージャー。リクルート、ライフネット生命、オープンハウスで人事畑を進み、現在は株式会社人材研究所を設立。採用領域を中心に、人事評価制度の構築・改定等、企業の様々な人事課題解決に取り組む。就活「後ろ倒し」の衝撃(東洋経済新聞社)、知名度ゼロでも「この会社で働きたい」と思われる社長の採用ルール48(東洋経済新聞社、共著)、「できる人事」と「ダメ人事」の習慣(明日香出版社)、DVD 120分でわかる!! 就職面接の新常識(ヒューマンアカデミー)、その他連載多数。

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