曽和利光氏 連載【「人を表現する言葉」を考える】

「人を表現する言葉」を考える(その1)『自責と他責』

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≪連載スタート!≫元リクルート人事部GM、株式会社人材研究所 代表の曽和利光氏に【「人を表現する言葉」を考える】をテーマにお話いただく連載です。

本コラムを担当します人材研究所代表の曽和と申します。

人事担当者の皆様は、採用であれ、育成であれ、評価であれ、常に「人を表現する言葉」を使って仕事を遂行しています。しかし、それらの言葉の多くは多義的で曖昧なまま使われています。議論のベースとなる言葉が曖昧では、そこから生み出される結論や施策は誤ったものになりかねません。そこで、このコラムでは、「人を表現する言葉」について、いろいろ考えてみたいと思います。もちろん私の定義が正しいということではありません。皆様の思考のヒントになれば幸いです。

 

第1回「人を表現する言葉」を考える(その1)『自責と他責』

360505710ab7ce5fa1973f57389ce5fa_s近年、「自責」がはやっています。書店の自己啓発本のコーナーに行くと、「自責本」がたくさんありますし、いろいろな会社の「求める人物像」に「自責」という言葉が盛り込まれています。「自責」とは、「何か物事が生じた際、その原因を『自分』だと考える傾向」のことを指すことが多い。「他責」はその反対です。しかし、私が以前所属した某社では、実は「他責」の人ばかり採用しており(適性検査でわかっている「事実」です)、世の中的にはかなり成功を収めている、と聞くと皆さんはどのように思いますでしょうか。

「人を表現する言葉」を考える上で、大事なポイントの一つに「社会的望ましさに惑わされない」ということがあります。「自責」のように、「そりゃあ、他責よりも自責な人がいいよね」と誰もが考える(=社会的に望ましいと思われている)ような言葉を使う時には、注意しなければなりません。本当は「他責」の方が自社にとって望ましい時にも、思考停止して「自責」を選び取ってしまうことがあるからです。

私は、「環境の可変性」と言っていますが、自社の事業や仕事を取り囲むビジネス環境を変えてもよい(あるいは、変えなくてはならない)程度がどれほどのものかによって、「自責」を必要とするか、「他責」を必要とするかが決まってくると考えます。例えば、鉄道の運転手さんのような仕事の場合、環境の可変性はおそらくあまり高くはありません。きちんと決められたことをしっかり守ることこそが重要で、自分の仕事の持ち分の範囲内での努力、「自責」が必要とされます。運転手が努力をして、規定の時間よりも早く目的地までたどり着くような、「環境を変える」ことは望まれてはいません。

 

 

529e91ebf10f49fc2295bd0793e7ca08_s一方で、勝ちパターンの定まっていないベンチャー企業や、これまでのやり方が陳腐化した企業などでは、環境は大いに変えるべきものとされます。現在の環境は制約条件ではなく「スタートライン」であり、変えていけないものなどないと考える姿勢こそが要求されます。例えば、部長が最適ではない戦略や方針を打ち出していると思っても、自責の人なら、それでも自分の領域内で頑張ってなんとか成果を出そうとしますが、他責の人は「部長、その方針よりも、こうする方がよいのではないでしょうか」と直訴するなどして、他者(=環境の一つ)を変えようとするでしょう。自責の人ばかりでは、なかなか環境は変えられません。

「自責」も「他責」も、時と場合によって良くも悪くもなるということです。このように求める人物像を検討する際、「自責」のような聞こえのよい言葉が出てきたら、一度「本当にそれは必要なのか」「どういう意味なのか」「なぜか」と疑ってみることが重要です。

株式会社人材研究所
代表取締役社長  
曽和利光氏

採用後ろ倒し対策のコンサルティング、面接官・リクルータートレーニング、イベント選考アウトソーシングなどの採用をすべて一気通貫で行う。元リクルート人事部ゼネラルマネージャー。リクルート、ライフネット生命、オープンハウスで人事畑を進み、現在は株式会社人材研究所を設立。採用領域を中心に、人事評価制度の構築・改定等、企業の様々な人事課題解決に取り組む。就活「後ろ倒し」の衝撃(東洋経済新聞社)、知名度ゼロでも「この会社で働きたい」と思われる社長の採用ルール48(東洋経済新聞社、共著)、「できる人事」と「ダメ人事」の習慣(明日香出版社)、DVD 120分でわかる!! 就職面接の新常識(ヒューマンアカデミー)、その他連載多数。

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