【インタビュー】リクルートの新卒採用は、究極のダイレクトリクルーティングだった

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元リクルート人事部GM、曽和利光氏が語るリクルート伝統の新卒採用。人材輩出企業の“人材”は究極のダイレクトリクルーティングによって生まれていた。

誰もが知る、人材輩出企業「リクルート」。ご存知の通りリクルート出身の有名起業家は多数。起業組以外にも、様々な業界で目覚ましい活躍をしているOB・OGが多くいる。社内の環境がそういった人材を育む土壌になっていることは間違いないが、採用の時点から他社と一線を画す、リクルートならではの方法が存在した。

元リクルート人事部GMとして培ったノウハウ・2万人の面接データベース・心理学とを融合しワンランク上の人材を採用する独自手法「プラチナ採用」を確立した、株式会社人材研究所 代表取締役社長 曽和利光氏に、これからの新卒採用のあり方を聞いた。

 

リクルート伝統の新卒採用は、「RS」。

 

― リクルートにいらっしゃったときは、新卒をスカウトで採用するとうかがいましたが、具体的にはどんなことをされていたのですか?

私がリクルートに入社したのは、1995年でした。今のリクルートとは全然違います。リクルート事件の数年後で、借金がありダイエーの傘下に入っていました。リストラ真っ最中でしたね。バブル後期には1000名ほど採用していたのが、50名まで落ち込んでいました。月間の労働時間が300時間超で、今であればブラック企業と言われてしまいますね。採用における逆風は強かったです。

dairiku3リクルートの人事になって驚いたことがあります。今の「エントリー」に当たるのが、当時は「資料請求はがき」でした。学生が気になる企業に資料請求はがきを送ります。興味を持っているわけなので、普通に考えると優先順位は第一位ですよね。でもリクルートは資料請求はがきを横に置いて、いろんな方法で集めてきた学生のリストに片っ端から電話をしていくのです。

 

― そのリストはどうやって集めたのですか?

既存社員の後輩やその紹介ですね。あとはアンケートに答えてもらうような企画で集めた名簿です。学生にとって、会社説明会なんて一番つまらないコンテンツですよね。ですから、会社説明会はほとんどやらないんです。とにかく彼らが会ってもいいなと思ってくれるような接触をしていきます。

 

― リストをもとに電話をかけて、一人ずつ会っていくのですか?

そうです。「あ」から順に電話をかけていきます。テレアポですね。もともとリクルートは求人広告を扱っている会社ですから、世の中のすべての企業がお客様。飛び込み営業もあり、ビルの上から下まで全部飛び込むなんてこともしていました。まさにそれの採用版です。いい人がいたら口説いていく。リクルートでは「RS」と呼ばれていました。RSとは、ローラー作戦です(笑)。

就職なんて全く考えていない人にも会います。就職する学年の人には可能な限り会いましたね。大学の在籍者数が接触目標だったくらい。今でいうダイレクトリクルーティングを徹底的にやってきました。まずは全数調査を行って、その中からいい人を見出していきます。

 

「会社の説明はしない。こちらから誘わない」が基本ルール。

 

― RSでいい人に出会えたら、本当に掘り起こした感がありますね。どんなことを話すのですか?

sowa02基本的に会社の説明は一切しないです。話すのは、自分という人間がどんな人間か。
「面白い」
「この人変わっているな」
「自分と合う」
「もう少し知ってみたいな」
そんな風に思ってもらえることが目標です。もちろん口説きもしません。“ダイレクトリクルーティング”というと、ダイレクトにガンガン口説くというイメージがあると思いますが、リクルートの人事は「絶対にこちらから誘うな。リクルートを受けたいと相手に言わせろ」と言われます。

接触している私自身に興味を持ってもらえれば「曽和というやつが働いているリクルートという会社は、世の中で“変”だと言われているけれど、どんな会社だろう」と、心が動きます。

そうなれば、
「リクルートのこと知りたいの?水臭いなぁ、早く言えよ。君が知りたいんだったら紹介してやるよ。その代り、部長を呼んできてやるからちゃんとやれよ」と上から目線で伝えることができるわけです。本当は部長は、学生を連れてくるのを今か今かと待ってるんですけどね(笑)こうして採用に繋がっていきます。これが基本形です。

 

― 会社の説明をするな、自分から来いというな、というのはなかなか勇気のいることですね。

多くの採用担当者が出来ていないことの一つが、“自己開示”です。学生の話は根掘り葉掘り、トラウマに至るまで聞くのに、自分の生い立ちや経験、価値観など自分のことを話す担当者は少ないですよね。仕事上のやりがいや喜びなどは話しますが、それだけではどんな人かまではわからない。学生からすると、よくわからない人から「君が気に入った!」と言われても、信じて良いかわかりませんよね。

私は今、人事担当者向けのリクルーティングのトレーニングもやっているのですが、受講者に「なぜこの会社に入られたのですか?」と入社理由を問うと、ものの見事にダメですね。

 

― 本当に学生が聞きたいのは、事業内容ではなくそういう部分ですね。

be07ec325ef946d1ff73926c8d591255_m学生にとって、ファーストキャリアの選択肢は多い。その中で一社に絞るというのは苦痛だと思います。とても大きな決断です。その一回しかないファーストキャリアでなぜ決断できたのか、その会社の何を好きになったのか。それが本当の事業説明です。学生はそれを聞きたいはずです。

自分が生きてきた生き様だったり、生まれ育ってきた環境。ヒストリーが重要だと思います。仕事の話ばかりされても、まだ経験していないのだから、学生としては実感がありません。でも彼らがこれまでに経験してきた学生時代までの話であれば、共感する部分がありますよね。共通点があれば、信頼に結びついてくると思います。

 

北風と太陽。学生の本音を知るためには。

 

― 昔のように、ダイレクトリクルーティングをしようにも、リストを集めづらくなってきていますよね。これからはどうしていくべきでしょうか?

私がお手伝いしている関西地場の不動産会社では、ダイレクトリクルーティングで非常に成功しています。100人程の規模で10名程の新卒採用なのですが、関西でいうと京阪神、関関同立クラスの優秀な学生ばかり採用しています。この業種でこの規模ということを考えると驚異的な実績です。

この企業も、会社説明から入らないのです。面接対策講座や就活講座を私が前座でやらせていただいて、そこに学生を呼ぶ。そのあとは懇親会です。その会社の社員がたくさん来て、就活に対する悩みや、社会人とはどんなものなのか、などざっくばらんに話をする場を設けます。そこから興味を持てば会社訪問や選考に繋がっていきます。まさに昔からのやり方。飲み会なんかは、昔はよくあったのです。現代でいうとSNSも盛んですね。

 

― 現代のダイレクトリクルーティングとして、気を付けなければいけないことはどんなことだと思われますか?

ダイレクトリクルーティングのサービスを利用して、企業側から声掛けするわけですから、学生としては“来てやった感”がありますよね。その学生に対して、さらに下手に出て会社の説明をしてしまうと、学生はずっと選ぶ立場にあるわけです。追えば逃げる、逃げれば来るという法則です。そうならないためには、先ほどの関西の不動産会社の話のように受け皿になるような企画を作っておくことが大事ですね。できるだけフラットに、口説くためではない場が必要です。

 

― 企業側からは、「その学生が自社にとって採用すべきかどうかがわからない」ということをよく聞きます。受け皿企画から、その先に行くときに、どこで判断すべきでしょうか?

120e27c6a6ee537f3443f49dc65e7331_lわからないのは、学生の心の鎧を解くことができていないからです。馬鹿の一つ覚えかもしれませんが、解くには自分も鉄の鎧を脱いで、自己開示することが重要です。自分の経験を伝えれば、意外なところに接点があったりします。そうすると、こちらから問わずとも、学生が勝手に話してくれる。そうすると、本音もわかります。

トラウマはなんだとか、根っこはなんだとか、コートを無理矢理脱がそうとすると北風のようなやり方になります。そうではなく、自分からコートを脱いでくれるように太陽作戦をとるべきです。

 

― 学生からしたら、他の企業と違うから違和感でしょうね。

「この人、俺話(オレバナ)ばっかりしている」と思うでしょうね。一般的には、聞くが8割、話すが2割とよく言いますが、8割話せとは言いませんが、5割くらいは必要です。信頼関係を得るには、自分から自己開示をするというのが鉄則です。そうすれば後は問わず語りですね。むしろ、そういう状況を作り出せなければ、ダイレクトリクルーティングはうまくいかないと思います。

 

ダイレクトリクルーティングで、脱ファン採用。

 

― ダイレクトリクルーティングは手間がかかるという懸念もあるようですが?

ダイレクトリクルーティングの妙味は“優秀だけれども、志望度の低い人が来てくれる”ということです。待っているだけでは来てくれなかったような人にアプローチできるというのがポイントです。だから、興味を持ってもらうように持っていかなければならない。オープンエントリーで集めた人と同様に扱ってはいけません。同じように扱えば、結局はオープンエントリーと同様の“ファン”しか残りません。

ダイレクトリクルーティングは非効率と思っている方は結構いますが、それは大きな間違いです。私は20年人事をやってきて確信を持っているのは、オープンエントリーで来る学生と、自らスカウトした人の合格率は10倍くらい違います。これはいろんな企業で採用のお手伝いをしていてもそうですね。

100人の説明会を行うのと、10人ダイレクトリクルーティングで接触を図るのは同じことです。しかも質も違う。自社の採用ブランド以上の人が来たりします。やはり手間をかける価値があるのです。一度もダイレクトリクルーティングをやったことがない人は、表面的な手間ばかり見えているのだと思います。一人一人に会うということを考えると手間かもしれませんが、10倍合格率が高いと考えると効率的だということがわかるはずです。これはもうやってみていただくしかありませんね。

 

採用の仕事は面白い。本当の面白さに気づくには。

 

― 結果的には、ダイレクトリクルーティングの方が工数削減になるということなんですね。

_MG_6733 (2)究極的には、採用担当者の仕事は楽になると思います。これまで1万人選考しなければならなかった。それが1000人になれば、採用担当者の日常は変わります。1万人もいると、どうしても「捌く」という意識になります。機械的な感覚になって、担当者も疲弊する。工場で製品を作っていくような感覚になって人の心を失っていく。ダイレクトリクルーティングなら、高確率な採用を手間をかけてやります。そうすると、ひとつの出会いをとても大切にするので、担当者の精神的健康も改善されるのではないでしょうか。人事の仕事、特に採用に関する仕事は重要ですし、責任も重い。ダイレクトリクルーティングをやってみて初めて、採用が面白い仕事だということに気付くのではないでしょうか。

 

■株式会社人材研究所 代表取締役社長 曽和利光
採用後ろ倒し対策のコンサルティング、面接官・リクルータートレーニング、イベント選考アウトソーシングなどの採用をすべて一気通貫で行う。京都大学で学んだ心理学とリクルート人事部GMとして培った営業スキル・2万人の面接経験を融合しワンランク上の人材を採用する独自手法「プラチナ採用」を確立。リクルート、ライフネット生命、オープンハウスで一貫として人事畑を進み、株式会社人材研究所設立。

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