「人を表現する言葉」を考える

「人を表現する言葉」を考える(その9)『想像力』と『創造力』

  • facebook share
just-have-a-great-day-merry-christmas-picjumbo-com

≪連載第9回≫元リクルート人事部GM、株式会社人材研究所 代表の曽和利光氏に【「人を表現する言葉」を考える】をテーマにお話いただく連載です。

「人を表現する言葉」を考える(その9) 『想像力』と『創造力』

目指す方向性は決まっていて、あとはそこにどれぐらいの早さで到達すればよいかという競争だった日本の高度経済成長時代は既に遥かに遠く、現代では「そもそもどこへ向かうべきか」で皆悩んでいます。どんな事業をやるべきか、どんな商品を作るべきか。そういう時に必要とされる能力で、最もポピュラーなものが、今回の「想像力」と「創造力」の2つの能力です。そのためか多くの企業で、このどちらか、あるいは両方が「求める人物要件」として採用されています。

ところが、この2つの能力は、実際には別々の概念であるにも関わらず、よく混同されて使われています(いつもながら、人を表現する言葉は、曖昧で多義的ですので、もちろん定義次第で意味がかぶる場合もありますが、今回もあえて違いを強調してみます)。「わが社の求める人材要件の一つは『想像・創造力』だ」と、しているようなところさえあります。もちろん、「両者は違う概念であり、両立しにくい能力なのですが、それでもうちは、その成し難いものを両方備えて欲しいのだ」とはっきり意識して言っているのであれば、文句を言う筋合いはありません。しかし、おそらく・・・混同しているような気がするので、どう違うのかについて述べてみたいと思います。

 

この2つの能力を考える時に、一番わかりやすいのは、英語にしてみることです。「想像」は“imagine”ですよね。一方、「創造」は“create”です。日本語だと、偶然なのか意図的なのか(知っている方、ぜひ教えてください)、奇しくも「同音」なので意味も似ているように思えてしまいますが、英語だとも語感からして違いますね。

「想像」/“imagine”は、何か物事を自分の頭の「中に」思い描くことです。「お前、もっとお客様の気持ちを想像しろよ」などと使われますが、テレパシーとまではいかずとも、相手の心の中を読み取り、自分の頭の中に「イメージ」することです。ジョン・レノンのImagineでも、ジョンの頭の中に既にある、彼の描く理想の平和な世界を「想像してごらん」と言われているわけです。マーケティング的な場面で関連した言葉を持ってくるなら、「マーケット・イン」(市場や購買者という買い手の立場に立って、買い手が必要とするものを提供していこうとすること)が近いような気がします。相手の思いを慮って対処するような、人をケアする、優しい気づかいのできる人物像が思い浮かんできませんか。

comparing-iphone-5s-with-iphone-5-picjumbo-com「創造」/”create”は、文字通り自分の「中から」新しい何かを生み出すことです。スティーブ・ジョブズは、「顧客が望むモノを提供する」のではなく、「歴史のページにまだ書かれていないことを読み取るのが私の仕事だ」と述べたそうですが、確かに、iPhoneが生まれる前に、市場調査を行って顧客が望むものを「想像」しても、それがiPhoneにはつながらなかったことでしょう。「マーケット・イン」に対するなら「プロダクト・アウト」的な行動につながりそうです。自らが持っているリソースから創出されたものを広く世の中に問うていくようなイメージです。人物像としては、内面に豊かな世界を持ち、自分のアイデアや価値観に信念を持ち、胸に情熱を抱えた人物像が思い浮かびませんでしょうか。

 

さて、あえて2つの能力の異なる側面を示してみましたが、もちろん、「想像」と「創造」は別の概念とは申し上げましたが、密接な関係があることは言うまでもありません。絶対に両立しないような二律背反のものであるということでもありません。頭の中で、いろいろな物事を「想像」できなければ、過去に経験した物事の新しい結びつきを発見して「創造」に結び付けることはできませんし、何かを「想像」するにあたって、細部まですべて経験してきたことで埋めることはできず、そこには勝手に自分で「創造」した部分が出てくるものです。

しかし、先に述べたように、2つの能力からイメージされる人物像はややタイプの異なる人物像であり、そうなると例えば採用広告を作る際でのイメージ訴求の仕方や、選抜や動機付けの方法なども異なってきます。ですから、人事や採用において求める人物像の議論をする際には、やはり分けて考えて、「どちらかと言えば、どちらの『ソウゾウ』が自社の事業や仕事には適しているのだろうか」と考えてみることは大事ではないでしょうか。

株式会社人材研究所
代表取締役社長  
曽和利光氏

採用後ろ倒し対策のコンサルティング、面接官・リクルータートレーニング、イベント選考アウトソーシングなどの採用をすべて一気通貫で行う。元リクルート人事部ゼネラルマネージャー。リクルート、ライフネット生命、オープンハウスで人事畑を進み、現在は株式会社人材研究所を設立。採用領域を中心に、人事評価制度の構築・改定等、企業の様々な人事課題解決に取り組む。就活「後ろ倒し」の衝撃(東洋経済新聞社)、知名度ゼロでも「この会社で働きたい」と思われる社長の採用ルール48(東洋経済新聞社、共著)、「できる人事」と「ダメ人事」の習慣(明日香出版社)、DVD 120分でわかる!! 就職面接の新常識(ヒューマンアカデミー)、その他連載多数。

  • facebook share
おすすめ資料

【市場レポート】2017年新卒採用を考えるためのレポート集 

これまでにリリースした市場レポートの中から、17卒の計画を考える参考材料となるものをまとめました。2015年9月実施の学生向けアンケート結果も掲載。採用手法の見直し、予算組などのシーンでご活用いただけます。

<内容>   1.市場動向(企業)  2.市場動向(学生)  3.新卒採用のメリット  4.新卒採用手法の変化  5.インターンシップ  6.採用予算