曽和利光氏 連載【「人を表現する言葉」を考える】

「人を表現する言葉」を考える(その6)『意欲』

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≪連載第6回≫元リクルート人事部GM、株式会社人材研究所 代表の曽和利光氏に【「人を表現する言葉」を考える】をテーマにお話いただく連載です。

「人を表現する言葉」を考える(その6) 『意欲』

 

既に何年も前から、「モチベーション」(動機付け)という言葉は、「意欲」「やる気」というような意味で人口に膾炙(かいしゃ)しています。細かい話をすると「動機付け」=「意欲」ではなく、「動機付け」により「意欲」が生まれる「原因→結果」の関係ですが、世間的にはほぼ同義で使われていますので、ここでもそうしておきます。ビジネスパーソンからアスリートまで、いろいろな人が「モチベーション」「意欲」に日々言及しています。なぜ、この言葉がよく使われるようになったのでしょうか。

 

まず、昔ながらの

「仕事とは責任感、使命感によって行うもの」
「意欲とかやる気とかは関係なく、やるべきことはやるのだ」

という考えから(私は古い人間なのか、この考えは好きですが)、時代が変わるにつれ、働く人々の気持ちを重視するようになり、どうすれば「意欲」「やる気」を持って仕事をしてくれるのだろうかということが課題になってきたことがあるように思います。また、どんどん創造性を求められる仕事が増えてきたことも関係あるかもしれません。創造性には、個々人の「意欲」「やる気」が関係していると言われます。義務的にやらされ感で行う仕事では、単純作業は行うことはできたとしても、創造性はなかなか発揮できないでしょう。

 

picjumbo.com_HNCK7388さて、そんな「意欲」ですが、人事や採用の皆さんがよく使われているのを見ると、大きく分けて二つの意味があります。

一つは「精神的な(メンタル面での)意欲」、一つは「身体的な(フィジカル面での)意欲」です。

「精神的な意欲」とは、その人が心の中で抱く理想や志、目標の高さのようなものです。どれだけの高みを目指しているかということです。「目標達成意欲」等とも呼ばれます。最近の俗語で言えば「意識が高い」というのもこれに当たりそうです。「身体的な意欲」とは、その人が何かをする際のエネルギー量やバイタリティのようなものです。どれだけのパワーでそのことを行おうとするかという程度の甚だしさの度合いです。「身体活動意欲」等とも呼ばれます。何をするにしても、人によって「当たり前水準」は違うものです。「身体的意欲」の高い人は、多くの人が「これぐらいでいいか」と思うレベルをはるかに超えて、物事をやりとげてしまうものです。

 

この二つの「意欲」についての注意点は、ややもすれば「精神的な意欲」が過分に評価されることが多いということです。採用面接などでは典型的ですが、高い理想を張り切って述べる応募者が評価されることが多々あります。「私は御社に入社できたら、必ずや営業でトップに立って見せます」と応募者が言うと「素晴らしい」となるわけです。もちろん、そういう「精神的な意欲」が高いのは悪いことではありません。しかし、「身体的な意欲」がそれに応じて高くなければ問題が生じます。理想が高ければ、それを実現するためにはよりたくさんのパワーが必要になります。しかし、「精神的意欲」>「身体的意欲」の人の場合、パワーが不足して、理想への長い道のりの途中で折れてしまう可能性があります。こういう人のことを俗的な表現では「空回りタイプ」「口だけの人」と言ったりします。

 

picjumbo.com_austriaroad1逆に、「身体的意欲」>「精神的意欲」の場合は、意外にうまくいくことが多いと言われています。言葉に出して表現する理想や目標は小粒でも、結局秘めたエネルギーがものすごい人は、結果を出すものです。「理想や目標が高くない」というのは、あまりよくないことのように聞こえますが、裏を返せば「小さなことで喜べる」とも言えます。そういう人に大きなエネルギーが備わっていれば、本人も気づかないうちに、遠くまでやってきている、大きなことを成し遂げている、ということがあるからです。

以上のように、毎度のことですが、同じ言葉「意欲」であっても、いろいろ意味があるものです。少しでもご参考になりましたら、幸いです。

 

株式会社人材研究所
代表取締役社長  
曽和利光氏

採用後ろ倒し対策のコンサルティング、面接官・リクルータートレーニング、イベント選考アウトソーシングなどの採用をすべて一気通貫で行う。元リクルート人事部ゼネラルマネージャー。リクルート、ライフネット生命、オープンハウスで人事畑を進み、現在は株式会社人材研究所を設立。採用領域を中心に、人事評価制度の構築・改定等、企業の様々な人事課題解決に取り組む。就活「後ろ倒し」の衝撃(東洋経済新聞社)、知名度ゼロでも「この会社で働きたい」と思われる社長の採用ルール48(東洋経済新聞社、共著)、「できる人事」と「ダメ人事」の習慣(明日香出版社)、DVD 120分でわかる!! 就職面接の新常識(ヒューマンアカデミー)、その他連載多数。

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